BSR002 – Cy Timmons – Heaven’s Gate (LP)

¥0

・Private press classical guitar & voice only masterpiece from 1998.
・Mastered & half-speed cut by Miles Showell at Abbey Road Studios.
・Vinyl pressed via RTI.
・Designed by Commission Studio.
・Comes with custom green G-Flute cardboard mailer with foil-stamped words of Cy.
・Includes liner notes publishing a full-length interview conducted by Cedric Bardawil.

*Shipped from Japan.
*Limited to one per customer.
*Due to the impact of COVID-19, orders and customer service responses will be delayed.

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Side-A
1. Heaven’s Gate (6:56)
2. Together Again (4:15)
3. What To Say (3:11)
4. Run Through The Pain (3:36)
5. Bilbo (3:00)
6. Paul & Didi & Me (2:55)
7. One More Time (3:08)

Side-B
1. My Baby (5:03)
2. Rainy Sunday Afternoon (3:34)
3. More Than Always (2:55)
4. Funny (2:16)
5. Sally & Charlie (5:36)
6. Lady Of The Twilight (2:55)
7. I Guess I’ll Make It (3:08)

Sample

Liner notes by 片寄 明人(GREAT3、Chocolat & Akito) / Akito Katayose (2020.11)

 このところ、時の流れが加速したように感じている。若い頃は長すぎると思っていた1日が、まるで早送りみたいに過ぎてゆく。

 体感時間としては1日16時間に満たないほどだ。加齢だけでは説明がつかない気がする。インターネットと共に生き、昔とは比べものにならない膨大な情報や、他人の思念に触れすぎて、時間の観念に歪みが生じているのかもしれない。

 音楽も次から次へと自分の中を通り過ぎ、痕跡を残さず消えてゆく。

 少年時代、膨大な未知の音をレコードショップで目の当たりにするたび、焦燥感を感じたものだった。いざ音楽が聴き放題になると、その渇望も薄れてしまうのだから皮肉な話だ。

 あれは数ヶ月前、夏の終わり。いまも記憶に強く残っている光景がある。波打ち際ではしゃぐ子供の姿を遠目に眺めながら、Cy Timmonsの『Heaven’s Gate』だけを繰り返し、繰り返し、何度も聴いた昼下がり。

 ガット・ギターの音色と歌声が空に溶ける。暖かな太陽の光が雲に遮られ、また姿を現す。その動きに共鳴し、翳りと安らぎを行き来する美しいメロディー。時がゆったりと流れる、絵画のような記憶。

 1974年の2nd『The World’s Greatest Unknown』から24年後に発表された1998年の3rd『Heaven’s Gate』 2020年に聴いた音楽の中で、最も心に痕跡を残したこのアルバムは、まるでオーパーツだ。

 フォーク、ジャズ、ブラジル音楽、クラシック…様々なエッセンスを究極に削ぎ落としたスタイルで表現したこの2枚に、四半世紀の隔たりは感じられない。完璧なまでに時間を超越している。その瑞々しさは未来永劫に保たれるだろう。

 幕開けとなるタイトル曲『Heaven’s Gate』から静かなる圧巻の世界が繰り広げられる。爪弾くガット・ギターと歌声だけで、7分弱の長さをこんなにも魅惑的に聴かせられるなんて奇跡としか思えない。まさに「天上の音楽」だ。

 続く名曲『Together Again』 朴訥として暖かな歌い出しから、わずかな翳りを経て、1度だけしか出てこない至福のサビ「I Love You」が歌われた瞬間の感動を味わって欲しい。

 フリューゲルホーンを模したスキャットに心奪われるA面ラストの切なく美しいバラード『One More Time』 時折はさまれるコードにハッとさせられるB面1曲目のポップ・ソング『My Baby』…駄曲は1曲たりとも存在しない。この『Heaven’s Gate』こそ、彼の最高傑作だと自分は思っている。

 こんなにも素晴らしい音楽が、当時アメリカの片隅で、ほんのわずかな人の耳にしか届かなかったとは、ただ言葉を失うばかりだ。

 Cy Timmonsのプロフィールについては『The World’s Greatest Unknown』のページにある中原仁さんによる素晴らしいライナーノーツを、ぜひご覧頂きたい。

 本人と直接コンタクトを取り、ロンドンのアビーロード・スタジオでマスタリングとハーフ・スピード・カッティングを施し、極上の音質と豪華なパッケージで再発した日本のBright Size Recordの仕事は、この知られざる名盤にふさわしい、強い愛に満ちている。

 Cy Timmonsとの出逢いは、矢のように過ぎてゆく人生にとって大きな喜びだ。この音楽は時の加速に歯止めをかけてくれる魔法だから。